ツインレイの彼に『普通の男の子』であって欲しいと願ったのは私です。
私の王子さまは、イングランドの領土も持っていなかったし、金髪碧眼の見目麗しい姿をしているわけでもない。
だけど、それが私の王子さまだった。そんな王子さまが私は大好きだった。
彼に、才能を期待していたわけじゃない。名誉も、勲章も、それから財力もいらないと思っていた。
私はただ『普通の男の子』であってほしかった、それが彼だったから。
きっと彼は何かを成すだろう。それは知っている。だけど、別にそれがなくてもよかった。彼が世のなかのために頑張って働いている。それだけでよかった。
ふたり出会って、ひとつに統合したとき。
私は、私のなかで分離した二元論を維持し、粛々と三位を分離させながら、最後には空と無を導き出しては互いがいっしょにいられる思想を手に入れようとしていた。彼が苦しんだすべてを私は排除しきれたんだろうか。
私は多くの統合を必要とし、その後、分離しようとしていた。ときおり、私がなんだかよくわからないトチ狂っているのはその統合経緯と分離しようとする経緯のことのようだ。
彼が抱えているラベリングの多くをはがしたかったのだろうか。
わからない。だけど、私が望んでいたことは、彼に『普通の男の子』に戻ってほしかった。そのままでもよかった。
彼が声をかけるたびに泣きそうなこと、それほどまでに頑張っていることを私は知っているから。
期待は重い、だけど、期待されないのもさびしい。そんな葛藤だろうか。
ありのままの彼のままでいいのに、私をひとつの期待として背負った彼を突き放したのが私である。私は彼の荷物になるつもりも、彼を犠牲者にするつもりもなかった。
私は彼に何もなくなって、それこそ運命がなくなって。普通の男の子であってほしかった。
もしかしたら、私はとてつもなく欲が深いのかもしれない。
この俗物的な世界で——。この世で生きていくのに、多くの名誉、財力、そして勲章があったほうがいい世界で「ありのままの彼」を望んだのだから。
私は彼に何も持たせるつもりはなかった。彼は無価値である。そして空である。飾ることのない彼ならば、きっと私は好きになるだろう。
星の王子さまだね。
私を守るために、そのために『羊』が必要だと思うみたいだけど、私に敵はいない。彼も私を守る必要性はない。
敵はいないからだ。それこそ、私たちの精神に潜む敵は幻想だ。私は傷つかない、守らなくても大丈夫だ。
力も、能力もいらない。なにもいらない。私は彼という存在以外に、何もいらない。だから私は彼の存在だけを生み出したかった。
それは普通の、どこにでもいる男の子の存在を生み出した。
それが私の幸せ。私の王子さまはどこにでもいる普通の姿をしている。