ツインレイの囮と、消滅。もう宇宙が消えるみたい。
どうやら私は、大きな勘違いをしていたようである。
彼から吸収したものはすべて『私』のなかに内包され、彼のなかは『無』となる。
そして私も無となる。空間反転世界の私たちは出会えば消滅する。これはもう出会ったときに決まっていたのかもしれないね。
私は囮だったようだ。
彼が無となる経緯で、私は彼の代わりの囮となって、彼へ罪が押し付けられることが無いようにしていたようだ。
彼は私が逃がした。そして、彼を私のなかへ入れこみ、私のなかに『彼を偽造』した。引き寄せられる彼へ罪を押し付けようとする存在を私へ引き寄せる。
彼が『無』となるまで。無とならば、必ず有が生まれる。種が生まれる。
私は彼のなかを空っぽにしたかったようだ。
種は宇宙を生み出す。
ツインレイはブラックホールとホワイトホール。縁はワームホール、時間の概念も空間の概念もない。
今の私の中にはこの三つが入り込んでいる。これが宇宙。
私は囮。化けている、彼に。
闇がやってくる、私は彼に闇を寄せ付けないために囮となってここにいた。
彼が生まれるまで、私は囮。無となる彼のなかに闇が入り込まないように。
だけど、もういいみたいだ。
彼はもう生まれたのかもしれない。もうわからない。
囮はもうお終い。
私は空っぽになる。自己統合をした――だなんて、言葉に簡単にできるけど、これはプラスとマイナスを合わせてすべてを消滅させる作業。統合じゃない、私のなかにある世界の消滅。
旧来のツインレイの概念の消滅。彼を吸収し、私のなかで消滅させる。
ホワイトホール。ブラックホールから吸収されたものが吐き出される。だけど、私のなかにはホワイトホールもある。ずっと循環させ続ければ『何もなくなる』。それは消滅。出し切るものを出し切ってしまえば、ホワイトホールは消滅する。
私はずっと出し切っていた。
代わりに彼のなかに生まれる、新しい世界が。渦を巻いて生まれる。
なんて言葉にしたらいいかわからないけど、もうお終い。
私は消滅する。
滅の字は『滅びてなくなる』の意味もあるが、仏教用語だと『涅槃』の意味がある。
ツインレイは『悟るか』または『滅びるか』のどちらかになるとも言えるんじゃないかと思っている。
つまりさ、悟っても不正解だし、滅びても不正解。
なんだろうなァ。けっきょく、どっちにしたって不正解なんだよ。
でも、私は両方やる。悟るし、滅びるし。
理由はわからないけど、終わらせなきゃいけない。
仏教も終わらせていかなきゃいけない。やっぱりこれも私のなかでは間違い。
存在が消える場合、ツインレイ女性は心が無いことに苦しむ。ツインレイ男性は心があることに苦しむ。
これは『存在の消滅』みたいだな。そして、心の消滅。
私たちは苦しむことになるだろう。
私は囮で、彼は逃げ出した人。
私のなかに化けていたものが相殺して消える。いわばツインレイの存在といか、彼と私の繋がりそのものを消滅させることになる。
何をやっているのか、正直さっぱりわからない。
だけど、私は私のなかで旧来の彼と私を消滅させていく。消す。これはね、いらないものなんだよ。
いらないもの。人のものを受け取り、人へ与える。そういう感覚っていうのかな。
いらないものなんだよ。提供する必要性も、提供される必要性もない。
すべては完全である。ゆえに必要がない。
ちなみに私には最初から『チョン』というか。中身なんてなかったんだよ。
だから創り出した。何もなかったから。私に愛なんてないよ。心なんてないよ。あると思うからそこにあった。
私には何もない。なんだろう。ないから優しくあろうとしていた。世界ではそれが『心』だと思っている。
でも、私たちに心なんてない。最初から何もない。
性善説とか性悪説とかもあるけど、どっちでもない。何もないものをどうにかこうにか定義したい人のほうがおかしい。
たぶん、何もない状態になる。上記『苦しむ』と書いている。
だけど、苦しむ感覚すらないんじゃないかな。
つまりね、傀儡に戻る。そんな気分。そして『無』になる。
無になれば、種がやってくる。
無は不安定になるっていうけど、不安定を維持することが出来るから、不安定でい続ける。
何もないけど、別に何もなくてもいられるというか。そんな感じ。
暇を受け入れる。別にそれでいいや。ろくでもないことも考えない。
無になって不安定を維持し続けて、そのなかに『種』を生む。
彼も私も『傀儡』になる。ただのぺらぺらの道具っていうか、ただの人形みたいになる。
そのうち、種が発生する。その種がビックバンを起こして、私たちが『わたし』と『かれ』っていう別々の宇宙を生み出す。
私たちは『ふたつでひとつの宇宙』だったよ。でも、もうバイバイ。
それぞれの宇宙を生み出す。ビックバンが起きる。
でも、その種がどこから発生するのかはやっぱりわからないや。
そりゃそうだよな、彼と私っていうツインレイの存在を抱き合わせる。空間反転世界の存在は触れれば消滅する。
ね、消滅するでしょ。私のなかで私と彼が抱き合わさる。おかげで私のなかでふたりは消滅する。
囮のなかにある『化』の字は、人の字がふたつ並んでいるんだよね。点によって反転させた文字が化ける。
化けることが出来たのは『ツインレイだから』なんだと思う。でも、それを『統合』させてしまったら消滅する。だって空間反転の存在だもん。消えちゃうよね。
彼もどんどんと消滅に進んでいて、たぶん、お互い同じタイミングで消滅する。
なんだろう。私たちはずっと消滅したかったんだね。
だから最初に「死にたいね。」って約束したんだね。きっとそれも幸せだよね、そんな話をした。
絶望からじゃない、ただの内緒話。こんなこと誰にも言えないけど、ふたりで死にたかった。いっしょに死にたかった。
人からすればこれは死だけど、存在は消滅するんだね。そりゃそうだ。私たちはツインレイっていう存在を与えられているから、存在の死。